今も愛される世界と日本の茅葺き屋根　SDGｓは当たり前！

茅葺き屋根といえば、世界文化遺産の「白川郷」や、五箇山の合掌造りは有名ですが、日本国内には他にも茅葺き屋根の地域があります。

また、ヨーロッパ諸国や東南アジアにもたくさん現存されています。

オランダでは、茅葺きの機能はもとより意匠的にも高く評価され、現代建築として新しい価値観を生み出しています。

SDGｓが推進されている昨今、天然素材を利用することができる茅葺き屋根は、昔の話ではないのです。

知れば知るほど奥が深すぎる茅葺きですが、世界にはどんな茅葺きがあるのかをご紹介します。

茅葺き屋根とは？

茅（かや）とは屋根を葺くために用いる草の総称です。

その素材は主にススキであり、この他にヨシ（葦）、カリヤス（苅安）、チガヤ（茅）などのイネ科の多年草が使われます（海外では小麦も使用されています）。

「空気層」による機能がすごかった！

茅といわれるススキやヨシなどの植物は、丸い棒状の茎をしています。

それを束ねると茎と茎の間にわずかな隙間ができますが、それを幾重にも丁寧に重ねると、たくさんの空気層が形成されます。

その空気層が優れモノなのです。

まず、太陽の輻射熱を防ぎ、室内の熱が外へ放出するのを抑えることができる断熱効果があります。

そして、通気性の良さが自然の空調効果を生み出します。

さらには吸音性の効果も兼ね備えています。

また茅などの植物には油分が含まれているため、撥水効果による防水性にも優れています。

本当に雨漏りしない？

茅を束ねたことでできる隙間が導水を促し、茅の上を水が走るので、内部に水を侵入させません。

さらに内側からは、囲炉裏やかまどの煙で燻すことによって屋根裏に煙のタール分が付着して、それが防虫と撥水の効果をもたらします。

茅葺き屋根の耐用年数は30年から50年といわれていますが、人が住んでいないと、上記の理由から老朽の速度は速くなります。

日本の各地の茅葺き屋根をご紹介

世界遺産になった白川郷の合掌造りが有名ですが、日本には各地に現役の茅葺き屋根があることを知っていただきたいと思います。

三重県　伊勢神宮正宮・別宮の萱葺き屋根

神宮ではススキのみを使って葺き上げられますので「萱葺（かやぶき）」として区別されています。

式年遷宮によってすべての宮が20年毎に作り替えられます。

秋田県　乳頭温泉鶴の湯本陣

17世紀元禄の時代には、湯治をした記録が残されています。

ノスタルジックな佇まいが昔話の世界に迷い込んだようです。

福島県　会津下郷町　

大内宿は、江戸時代に会津若松城下と今市宿を結ぶ下野街道の宿場町として整備されました。

ススキがよく似合う秋の景色です。

岐阜県　飛騨民族村　飛騨の里

飛騨北部の豪雪地帯に建っていた茅葺き民家が、飛騨の里に６戸移築されています。

こちらでは、内部構造や茅葺き民家の暮らしなど、詳しく見学することができます。

合掌造りは屋根裏で養蚕ができるようにしたため、背の高い建物になりました。

これは、江戸時代後期の建物で、切妻造り平入り茅葺きです。

こちらも養蚕のため、中２階が広い構造になっています。

こちらは江戸時代末期の建物で、入母屋茅葺きです。

岐阜県・白川郷と富山県・五箇山　

世界遺産に登録された豪雪地帯の合掌造り集落です。

江戸から明治期にかけて建てられたもので、今でも多くの人々がそこで生活を営んでいます。

自然由来の材料で建てられた豪雪に対応する建物は、先人たちから受け継いだ知恵と力の賜り物です。

京都府　美山町　

美山町内「北」集落には５０戸のうち３９戸が茅葺きの屋根で、伝統的技法による建築物群を含めた歴史的景観の評価も高く、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。

あじさいの時期は、草や山の香りでいっぱいの夏を感じられます。

重要文化財 石田家住宅

日本最古の農家として、昭和47年に国の重要文化財指定となりました。

典型的な初期の北山型民家です。梁や柱などには手斧(ちょうな)仕上げが見る事が出来ます。

兵庫県　神戸市北区

７００戸を超える茅葺き民家が現存しており、日本でも有数の茅葺き民家が残っている地区です。

日本最古と推定される箱木家住宅や、江戸中期に建てられた茅葺き建築の重要文化財も多くあり、農村歌舞伎舞台も現存しています。

明治35年頃に建てられた農家の構え　蔵、納屋、離れが主屋を囲むように配置されています。

千葉県　旧手賀教会堂

現存する日本で唯一の茅葺き教会堂です。

海外にもある茅葺き屋根

イギリス　スコットランド南西部の都市ダンフリースにある施設

中世ヨーロッパの雰囲気を残した茅葺きコテージは、1970年代までは保存状態が悪く、その後も何度も遺棄と再建を繰り返しました。

現在は施設団体による保存活動がされています。

フランス　ブリエール地方ケネット村　

ブリエール自然公園によって復元された１８戸の茅葺きコテージ。

ドイツ北部　ディットマールシェン地方

200年の歴史を持つ茅葺きコテージです。

茅葺き屋根の家は長い間、手つかずのままでしたが、2018年にリノベーションが始まりました。

室内も機能的にリノベーションされています。

オランダ

1970年代から始まった法改正の取り組みにより、茅葺きを取り扱う会社が、法改正に向けた取り組みを始めました。

その後1991年に法改正が実施され、新築の茅葺が許可されたという経緯があります。

こちらは茅葺きの新築住宅です。

オランダ西部・ミッデンデルフトランドの消防署も茅葺きです。

ステータスとなった茅葺き建築

自然環境保全に敏感な海外の富裕層の間では、別荘に茅葺きコテージを持つことがステータスとなっています。

また、アフリカには茅葺きのホテルが登場しています。

イギリスでは茅葺きのパブ（酒場）が、とてもいい雰囲気で利用されています。

もはや昔を懐かしむのもではなく、新しいサスティナブル建築として評価されています。

先頭を切ってデザインを追求しているのは、オランダとデンマークです。

国際茅葺き協会に加盟している国は、現在イギリス、オランダ、ドイツ、スウェーデン、南アフリカ、デンマーク、日本の７か国です。

SDGｓが推進される昨今、ますます茅葺きは再評価されていくことでしょう。

まとめ

国内、海外それぞれの茅葺きはいかがでしたか？

重厚な存在感と有機的な温かみのある茅葺き建築を再認識できたのではないでしょうか。

エコロジカルな茅葺きを通して、改めて未来を意識してみるのもいいかもしれません。

変化の激しい今だからこそ、認識を変える柔軟性を持ちたいものですね。