(16)海の日とウナギと物価高騰(2026.7.20)
「俺が子供の頃、海の日なんてなかったよな」
調べてみると、7月20日が「海の日」として国民の祝日になったのは1996年。7月の第3月曜日に移ったのは2003年である。96年なら私は25歳、すでに社会人だ。子供の頃の記憶にないのは当然である。
リフォーム業界では、この海の日頃からお盆までは修理・修繕・メンテナンスの依頼が多く入る一方、新規の集客は鈍化しがちで、営業的には悩ましい時期だ。ただ「盆暮正月」という言葉があるように、「お盆までに工事を終えてほしい」「お盆が過ぎてから着工したい」と、お盆はひとつの節目になるため現場は忙しくなる。
今年は天気予報で40℃という数字を目にすることも増えた。暑さで集中力が切れれば、怪我や事故を誘発しかねない。自分は大丈夫と過信している人(例えば私)こそ要注意である。自己管理は怠らないようにしたい。
さて、江戸時代から続く夏の習慣といえば「土用の丑の日のウナギ」だ。
「土用」は立春・立夏・立秋・立冬それぞれの直前約18日間を指し、「丑の日」は日を十二支で数えたときに丑にあたる日で、12日周期で訪れる。つまり「土用の丑の日」とは、土用の期間内にある丑の日という意味だ。2026年は年に5回あり、夏の土用の丑は7月26日である。
なぜウナギか。調べてみると天然ウナギの旬は本来、秋から冬。江戸時代、夏場に売れないと嘆くウナギ屋が平賀源内に相談したところ、「土用の丑の日はウナギの日」と張り紙を出すよう提案され、大盛況となった。やがて同業者が真似をして定番になった、ということらしい(諸説あり)。
もっとも「花より団子」の私は、いつでもウナギを食べたい気分である。
今年は豊漁で、流通量は例年の120〜130%、スーパーの価格も前年より安いとニュースで見た。数年前に流通量が減って以来の「高級品」というイメージも薄れ、回転寿司やファミリーレストランでウナギフェアを目にした。
「安くなったのは嬉しい」と思う一方、数年前、仕入れが高くなった際に値上げしたウナギ屋は、仕入れ値が下がったからといって価格を戻すのだろうか、とふと思った。
仕入れが上がったから上げる、は理解できる。下がったら下げるのか。
最近どこへ行っても「物価高騰につき価格を改定」という案内は当たり前のように目にする。物価が下がったときに還元(改定)する企業はどれほどあるのだろうか、といつも考えてしまう。(その点、航空会社の燃油サーチャージは非常にわかりやすい仕組みだ)
そこで思い出したのが、現場管理をしていた頃の、ある職人さんとのやり取りである。
「この現場は1日当たりで計算してほしい」
「何日かかるでしょうか?」
「7日はみておいてほしい」
「8日かかっても7日分でいいですか?」
「いや、それじゃ赤字だから8日分ほしい。やってみないとわからないから」
「そうですか、手間請けだから仕方ないですね。では、8日かかったら1日分を加えるとして、もし6日で終わったら6日分でいいですか?」
「いや、それは俺の技術料だから7日分はもらうよ」
つまり、超過した分の日当は請求するが、早く終わった分の利益は自分のものにする、という主張である。(コイツ、マジか)と若い私は思った。発注したかどうかは失念したが。
建築業界の価格決定方法にはいくつかあるが、この手間請け(日払い)は、原価が圧縮されにくい本質をここに抱えている。頑張って5日で終わらせればお客様には喜んでいただけるが、それでは職人の利益にならない。7日、あるいはそれ以上かけたほうが得になってしまう。当時の私も、この方法では現場品質は上がらない(むしろマイナスになる)と考え、そのような発注は限定的だったと記憶している。
と、少し天邪鬼に考えてみても物価高であることに変わりはなく、しばらく落ち着く気配はない。金利の上昇も含め、経営者としては頭の痛い季節である。
最高経営責任者 蜘手 健介
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