(20)なんだかんだと自分の話(2026.8.17)
ある方に昔「若い時は『自分の話、自慢話、武勇伝』、老いてくると『自分の話、お金の話、薬の話』になる」と聞いた。若くても老いても「自分の話」は外せないようだ。
お金の話も、貯金ではなく株や投資、運用といったことが話題に出てくることが増えた。60歳を前に、会社経営も後継者や引き継ぎをどうするか、最近ではM&Aもその選択肢になりえる。お金の話と通ずるものがある。老いてくると薬の話になるというが、病気や怪我、自身のこと、周りで起きたことを含めて詳しくなるのは理解できる。私も父が昨年から病に伏し、今年初めに他界したが、ガン患者の緩和ケアや自宅看護、葬式、その後の一連の流れを経験した。
また同年齢、少し上の世代でゴルフを仕事、趣味にしている人の多くで、指に怪我をする人が増えた。代表的なのは「バネ指」と呼ばれる症状で、指を曲げる屈筋腱とそれを押さえる腱鞘の間で起きる炎症により、スムーズに指が動かなくなる。とても痛いらしい。
私もこの夏くらいから、指の何箇所か痛みが出てきた。まだ我慢できない程ではなく、冷やしたり、しばらくゴルフをしないと治るのだが、「バネ指は嫌だな」と心配をしている。
歳をとって変わってきたことがまだある。
出かけることが少なくなったせいか、モノより思い出や経験に価値を感じるようになった。以前は服や靴、革製品などを自分へのご褒美として奮発していたが、自分の身を着飾るブランド品を所有することに興味がなくなった。正確に言えば、買うのなら本当に良いものを買うようになった。40代に入って時計に興味を持ったが、所有するだけで使わないものは譲ってしまったし、使わないブランド品はメルカリで販売した。
思い出や経験といっても、海外や高級リゾートではなく、1泊で行ける温泉地や「秘湯を守る会」に登録されている小さな温泉宿がいい。最近は熊の心配をしなくてはならないが、狭い道をクネクネと運転して辿り着く秘湯は、それぞれに良い思い出になる。
親の気持ちや苦労も、この歳になって痛いほどわかるようになった。おかげさまで子供たち2人が社会人となり、経済的に自立した。働く姿を見て頼もしい反面、これからの人生について親として何を伝えられるかと思う。
「あんたも親になれば、親の苦労がわかる」と若い頃、母に言われた。心配だったに違いないと今更ながらに思う。
母は多い兄妹の末っ子に生まれた。明るく、朗らかで、他人の心配ばかりする根っからの末っ子。それがわがままで支配欲の強い父と出会い、その期待に応えようと(反目、対立をしながら)父を支え、最期を看取った。これからは自分の人生を生きてほしい、と思っていた矢先、8月初旬、自宅にて脳出血で倒れ、そのまま緊急入院した。大事には至らなかったが、右側に強い麻痺が残りそうだと主治医から聞いた。
病院のベッドで元気だった面影もなく伏しているのを見て、これまで心配ばかりをかけてきただけで「親孝行」を何1つできていなかったことに気づいた。おそらく母は、退院できたとしてもこれまでのように1人で暮らすのは無理だろう。どの程度の介助が必要になるかはリハビリ次第だが、人生の最後に差し掛かっている姿を見て、できる限りのことはしてあげたいと心から思う。
見舞いにいった病室から外を眺めて今日も暑いなと思った。
この夏もいつか終わり、秋がきて冬が到来する。何をもって現役というのか、その定義はわからないが、夏に海へ行き、冬にスキーへ行ける回数も、あと何回だろうかと考える。
母の心配をしながら、結局は自分の残り時間を数えている。この期に及んで「自分の話」ばかり考えてしまう私は、やはり老いているのだろうか。
最高経営責任者 蜘手 健介
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