（8）美しい倉敷の町　カスケホーム視察記（2025.5.28）

2025年5月、Jackグループの企業視察会として、岡山県倉敷市に本社を構えるカスケホーム社を訪問した。参加は10社16名。同社の経営哲学、事業戦略、そして地域に根ざす姿勢を学ぶ、非常に有意義な機会となった。

倉敷市は、岡山県で第2位の人口規模（約47万人）を誇る中核都市だ。江戸時代には幕府の天領（直轄地）として栄え、商人町としての気風が今も街の空気に息づいている。

観光地としても広く知られ、「美観地区」には白壁の蔵屋敷、石畳の通り、歴史的建築が並び、運河沿いの町並みと調和した風景は国内外から高く評価されている。日本初の西洋美術館「大原美術館」もこの地にある。

この地で創業し、地域と共に歩んでいるのがカスケホーム社である。現在はグループ3社体制で、リフォーム売上18億円、グループ総売上28億円を誇る。リノベーション、新築、修繕など「住宅ワンストップサービス」の提供を通じて、地域における確かな存在感を築いている。（ちなみに、テレビCMは四国でも放送されており、香川・高知でも認知度が高いらしい。笑）

安藤社長によれば、カスケホームはこれまで約5年周期で成長と停滞を繰り返してきた。2025年は再び“成長期”に突入する節目の年として捉えており、目下の目標は売上30億円の壁を越えることである。

同社が掲げる理念は「永続と幸福」。これは、明治16年創業の精神を現代の経営にどう活かすかという問いへの明確な答えでもある。

注目された取り組みのひとつが、リノベーションでの性能向上への取り組みである。
気密性や断熱性の数値化を伴った提案によって、価格競争から脱却し、価値で勝負する姿勢が明確に打ち出されていた。参加者からも高い関心が寄せられていた。

一方で、もうひとつの柱が、年間3,000件にものぼる修繕・メンテナンス対応だ。
一般には「儲からない仕事」「手間がかかる割に利益が薄い」として敬遠されがちな領域である。しかし安藤社長はこう言い切った。

「修繕は収益ではなく、信頼を生む企業の財産です」

現在その言葉の通り専門員８名を置き、顧客対応にあたっている。多くの経営者が避けたがる領域だが安藤社長は、これを“地域への責任ある仕事”として昇華させていた。
私はふと「中小企業経営の真髄は、こういう部分にあるのではないか」と感じた。住宅リフォームとは、単なる「家を直す仕事」ではない。それは、地域に受け継がれる住宅という資産を守ることであり、ひいては、社会に恩返しをする仕事だとも言える。

今回の視察を通じて、カスケホーム社の経営哲学と事業姿勢に触れ、私たち自身の事業の原点を改めて見つめ直すことができた。社外秘の情報まで惜しみなく開示くださった安藤社長、原田部長をはじめ、温かく迎えてくださった社員の皆様に心より御礼申し上げます。

閑話休題

私自身、安藤社長はシクミ研究会（現在のJackアカデミー）の卒業生でもありとはかれこれ１５年以上の付き合いになるだろうか。出会った当初は純粋さと情熱さ、そして青さを持つ「若旦那」だった。
歳を重ねた今、顔つきはしっかりと経営者になり考え方の芯も太くなったが、いまだにどこかに「若さ」と「無邪気さ」を感じさせる不思議な魅力が残っている。

「これからは“フーテンの寅さん”として生きていきたい」と語るその姿には、ある種の覚悟とユーモアが同居している。お酒が進むと毒舌も増すが、それすらも明るくて面白い。人に嫌われない性格というのは、ああいう人を指すのだろうと思った。

また、これまでカスケホームの社員の皆さんとは、営業研修やマネージャーカレッジなどで関わらせていただいたことがある。毎回感じるのは、「経営者と社風の一致度が高い会社」だということだ。社員の皆さんは明るく、素直で、まっすぐ。経営者が信じるものに共鳴し、それが組織全体の空気、すなわち社風をつくっているのだと感じた。

「よい会社、組織を作りたい」とは中小企業経営者の共通する思いだ。私たちJackグループもまた、挑戦と研鑽を続け、互いに高め合える関係であり続けたいと感じた視察だった。

しかし倉敷の美観地区は本当に美しい。ゆっくりと再訪したいと思った。