(7)国を信じる(2026.5.18)
数年前、シドニーを訪れた際、現地ガイドに案内してもらったことがある。
彼いわく、オーストラリアには独特の働き方があるという。数年働いて金を貯め、すべて使い切るまで旅行に出る。戻ってきてまた働き、ある程度貯まったらまた長期のバカンスへ。貯金という概念がほとんどない。「稼ぎたい奴はみんなアメリカに行くよ。オーストラリアに残ってるのは、金にあまり興味がなくて、自由気ままに暮らしたい連中ばかりさ」と笑っていた。
もちろん、これは一人のガイドの言い分であり、オーストラリア全体がそうだというわけではないだろう。ただ、彼の屈託のない語り口には、この国の風土そのものが滲んでいるように感じた。資源国であり、広大な土地とエネルギーを抱える国。日本とはずいぶん様子が違うものだと思った。
日本では、仕事とは単なる収入源ではなく、自分の人生観や価値観そのものを表す場所として捉えられることが多い。「働かざる者食うべからず」、憲法にも勤労の義務が明記されている。資源がないからこそ、知恵と工夫を出して労働することが尊い、とされてきた国である。
ガイドに「将来は心配じゃないのか」と聞いてみた。返ってきた答えは明快だった。「そんなことは国が考えてくれる。俺たちは何も心配していないよ」。脳天気といえば脳天気、素晴らしいといえば素晴らしい。ある意味、国をそこまで信じきれるというのは、羨ましくもあった。
あれから数年。イラン・米国・イスラエルを巡る緊張の中で、ホルムズ海峡が封鎖された。
日本に入ってくるはずの原油の90%以上が遮断される事態となり、石油メーカーや商社は知恵を絞り、遠方からより高い原油を調達している。それでも満足な供給量には届かない。調べてみると、イランの原油は他産地と比べて相当安い。どこから代替で引いてきても、割高になる。高くて買えず、買えないから物がない。この二つを同時に経験するのが、今の日本である。
住宅業界も例外ではない。私たち自身も含め、多くの会社で「物がない」「足りない」という声が現場から上がり、不安が広がっている。中小の新築工務店は6月から着工が止まると聞いていたが、大手ハウスメーカーでも9月からは着工できないという。中小と大手の差がわずか3ヶ月しかないという事実には、正直驚いた。
経営者仲間や業界団体の方々と意見交換をしてみた。短期的にやれることは明確で、在庫をしっかり確保し、工事を止めないこと。しかし中長期で「この事態を回避する手」を探そうとしても、見当たらない。増税のときも、コロナのときも確かに大変だった。しかし今回は、それらとはまったく様相が違う。
普段は国に文句ばかり言っている私だが、今回ばかりは、政府と商社に本気で頑張ってもらうしかない。
かつてシドニーで、「国が何とかしてくれる」と信じきっているオーストラリア人の顔を見て、「それで本当に大丈夫なのか」と思っていた。その私が、今、この国と商社を信じて、ただただ願うばかりの日々を送っている。
資源のない国で、資源の話をしている。脳天気とは対極にいたはずの日本人が、結局は祈ることしかできない。皮肉なものだと思う。
最高経営責任者 蜘手 健介
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