(52)残された時間、残された使命(2026.3.29)
イランと米国、イスラエルは再び衝突を繰り返している。理由やきっかけ、その裏にあるものはわからないが、ホルムズ海峡封鎖など遠い世界の出来事が、実生活に影響を及ぼしつつある。
「衣食住足りて礼節を知る」というが、満たされてなかろうが今日はあっけなく終わり、明日が来る保証などない。
「人生は一度きり」 自分の心に繰り返し突き刺した言葉だ。人生とは諸行無常なものだと年を重ねるたび、概念から経験に変わって深く刻み込まれていく気がしている。
今年の冬、私は二つの死と向き合った。
一つは父の死。肺気腫と食道がんによる闘病を経て、今年一月に旅立った。もう一つは川本健一君の死。広島でリフォーム会社を経営していた後輩経営者が、二月十六日の未明、自宅で何者かに命を奪われた。二つの死は、形がまるで違う。父は時間をかけて、手を握りながら別れを告げることができた。川本君は突然だった。先月、四十九日にお招きいただき手を合わせてきた。言葉にならなかった。
父が病床に伏してから約一年、在宅介護で約二週間、父と向き合う時間が増えた。私は、自分がいかに「寂しさ」という感情に鈍い人間かを知った。父の会社を去ったとき、様々な局面で距離を置いたとき、父の寂しさに気づくことはなかった。
しかし病室からベッドの上から手を振る父の姿を思い出すたびに、その寂しさが今になって胸に刺さる。今になって思う。私は寂しさに鈍感なのではなく、寂しさを感じないように生きていたのかもしれないと感じた。
経営者は孤独だと言われる。しかし本当の孤独は、孤独であることに気づかないことではないか。父の死を通して、改めてそう思う。
川本君は明るく朗らかで、誰からも愛される男だった。私にとっては弟のような後輩経営者だった。後から奥さんから聞いた。
「主人は蜘手さんに褒めてもらいたいと常々言っていました」
四十九日で伺った時、奥さんがボロボロになったポチ袋を二つ見せてくれた。それは私が新年にお会いした方へ配っているお年玉、そしてもう一つは売上三億円の祝い金のポチ袋だった。
「主人のことなので財布に入れて大切にしていたのだと思います」
渡したことも、忘れていた。こんなに大切にしていたなんて。涙が出た。
川本君とは色々な話をした。苦しい思いや楽しい時間を共有した。私は彼に十分に向き合えていただろうか。経営者として師弟の絆を感じてくれていた彼の期待に応えていたいたのだろうか。
このコラムを書き始めて十四年が経つ。最初の一冊の冒頭に、こう書いた。
「例え我が社がその形を変え社員が離散することになっても、文字を残せば永遠となる」
父もまた、形を残した。言葉は少なかったが、背中で語り続けた。川本君も、短い経営者人生の中で多くの人に愛された事実を残した。
人は必ず死ぬ。いつそれが来るかは誰にもわからない。
道元禅師は「志のある人は、人間は必ず死ぬということを知っている」と言葉を残しているが、父と川本君の死は、私にその問いを突きつけた。
お前は今日、悔いなく生きているか。誰かの心に何かを残しているか。目の前の人間の寂しさに、ちゃんと気づいているか。
年を重ねることで人生の意味も深くなる。私に残された時間はあとどのくらいか。
最高経営責任者 蜘手 健介
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