(48)スッキリしない毎日が続く(2026.3.9)
スッキリしない毎日である。川本君の事件から三週間が過ぎた。犯人はまだ捕まらず、新しい情報も少なくなった。弔問に伺いたいと思うが、先方の準備もまだ整っていないようで、連絡を待っている状態である。
事件の後、各地でJack会員と話す機会があった。毎朝スマホで「犯人逮捕」「事件解決」というニュースがないかを確認することが、いつの間にか日常になってしまったのは私だけではなかったようだ。
一月に他界した父のことは、ふと思い出さない日もあるのに、川本君のことを思い出さない日はない。あれから三週間、毎日のように彼のことを考えてしまう。きっとこれは私だけではないだろう。彼の屈託のない笑顔、あの愛嬌のある表情が頭に浮かぶ。
事件を知った朝、言葉を失った。それ以上に、信じたくなかった。何かの間違いではないかと思った。あれから三週間。心の痛みは消えるどころか、さらに重く深くなっている。
「さらば川本君。またな」
参加してくれていたすべてのLINEグループから川本君の名前を削除した。
本当に言葉にならない。
奇しくも今年九月十八日、Jackグループの全国大会を広島で開催する予定にしている。午後は大会を行い、夜のパーティーを川本君のお別れ会(仮称)にできないかと考えている。事務局とも確認し、ホテルとも打ち合わせをしなければならないが、それまでには事件もすっきりとした結果になっていることを願うばかりである。
さて、二月中旬から三月にかけて、寒い日が三日、暖かい日が四日ほど交互に続き、本格的な春へと向かう寒暖の周期を「三寒四温」という。高気圧と低気圧が交互に通過することでこの周期が生まれるようだが、冬は体調や気持ちも揺れ動きやすい時期である。
一月に父が他界したが、最近も知人が病気で亡くなったことを知った。
(冬はもしかして亡くなる人が多いのではないか)
そう思っていたところ、葬儀社の人から「冬は夏より葬儀の数が多いですよ」と聞いた。
調べてみると、やはりそうだった。十二月から二月にかけて死亡率が最も高く、これを「冬季超過死亡」と呼ぶらしい。血圧の急激な変動や、入浴時のヒートショックによる心疾患・脳血管疾患の増加に加え、インフルエンザなどの感染症の流行も重なる。外出機会の減少や運動不足なども影響しているのかもしれない。
また、日照時間がメンタルに関係することはよく知られている。日照時間が短くなると、脳内のセロトニンやドーパミンの分泌が減少し、気分の落ち込みや意欲の低下を引き起こす「季節性うつ(冬季うつ)」を発症しやすくなると言われている。
プロスポーツ選手が怪我をきっかけにうつ状態になった、という話も聞いたことがある。活動的だった人が家に引きこもり、外に出る機会が減れば、論理的にそうなるのは理解できる。
日照時間が短い秋田県、青森県、山形県、新潟県などと、人口十万人当たりの自殺率が高い県(岩手県、新潟県、秋田県など)を照らし合わせてみると、日照時間と心の健康は無関係ではなさそうだ。やはり冬という季節は、体力だけでなく心のエネルギーも消耗しやすい時期なのだろう。そういえば「退職したい」と相談に来る社員も、夏より冬のほうが多い気がする。
さて、「冬支度」という言葉がある。冬はただ寒さに耐えるだけでなく、しかるべき心構えをして乗り越えるための季節なのかもしれない。
「冬対策は準備できるが、変化に備えるのは容易ではない」と痛感した出来事があった。
父が懇意にしており、私も久しぶりに訪れた馴染みの店へ、母と夕食に出かけた。最近の客入りについて聞くと、「戦争(中東情勢の悪化)の影響で、ぱったりと客足が遠のいた」とのことだった。新型コロナ禍の始まりを思い出させるような、急激な変化だったという。
調べてみると、中東の空域閉鎖が影響しているようだ。近年はロシア・ウクライナ情勢の影響でロシア上空を飛行できないため、日本と欧州を結ぶ航路は中東経由が主流になっていた。しかしそこも制限されたことで、直行便の迂回や減便を余儀なくされているらしい。
「飛騨高山は欧州からの観光客が多かったから、ホテルも大変でしょうね」
店主のその言葉が印象に残った。
原油価格の高騰も予想されている。遠い国の紛争も、私たちの生活と無関係ではない。そう考えると、世界は地続きでつながっているのだと改めて感じる。抗うことのできない大きな変化に対して、私たちは工夫しながらやりくりしていくしかない。
奇しくも三月十一日は東日本大震災の日である。いつ起こるかわからない自然災害、そして遠い地の紛争がもたらす生活の激変。来てほしくない「いざ」と「まさか」に備えるのは簡単ではない、と感じる今日この頃である。
最高経営責任者 蜘手 健介
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