(31)百頭目の熊、自然界と人との関わり(2025.11.10)
「百匹目の猿」という話をご存じだろうか。私が最初に知ったのは約20年前、故・船井幸雄氏の著書であった。
宮崎県串間市の島に棲むニホンザルの一頭がイモを洗って食べ始め、それを見た仲間も同じ行動を学習する。そして、その行動を取る猿が一定数(仮に100匹)を超えると、接触のない別の群れにもその行動が伝わるというものだ。
科学的には偶然の重なりや観察学習による“文化伝播”と解釈されるが、人間社会でも、ある閾値を超えた瞬間に価値観や行動が一斉に変わることがある。
私自身、この業界にいて、縁もゆかりのない会社が同じ時期に同じようなサービスを展開し始めた経験を何度も見てきた。模倣でもなく、パクリでもなく、ただ“同時発生”する現象。社会にはこうした“臨界点”が確かに存在する。
そして今年、多く耳にしたのが「熊による被害」である。
出会い頭の襲撃に加え、“人が食べられた”という衝撃的なニュースも続いた。
私は冗談半分に、「人を餌と認識した百頭目の熊が街に現れる日も近い。バイオハザードならぬ、ベアハザードだ」と話していたのだが、岩手県で10月、移住して温泉旅館で働いていた方が熊に襲われて亡くなるという痛ましい事件を知った。
亡くなられた笹崎さんという方は、ライズホーム森山社長の紹介で何度か食事をご一緒したことがある。とても温厚で優しい人だった。心から驚き、胸が痛んだ。心からご冥福をお祈りしています。
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さらに私が大好きな岩手の夏油温泉・元湯夏油は、この影響を受けているといい来年以降の客足も心配だという。
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また必ず伺いたいと思う。どうか秘湯の灯を守り続けてほしい。
閑話休題。
日本に生息する熊は「ヒグマ」と「ツキノワグマ」の2種類。
ヒグマは北海道、ツキノワグマは本州に広く棲息し、かつては九州にもいたが現在は絶滅したとされる。
本来は木の実、昆虫、小動物、魚などを食べる雑食性だが、冬眠前に十分な栄養を蓄えられないと人里へ下りてくる。近年はリンゴや果樹を荒らすだけでなく、米の味を覚えた熊も増えているようだ。
熊が人を襲う理由は主に「遭遇の驚きによる防御」か「捕食活動」であり、実際に“人を餌として認識した”個体が出現し始めている。
もしこの行動が一定数を超えれば、全国的に“捕食行動の文化化”が進む可能性が高い。これこそ“百頭目の熊”である。
私の自宅のある岐阜県も“熊王国”であり、出没や被害のニュースを聞かない日はない。意外に近くまで来ているのが現実である。
さて、このクマの被害について「駆除か、共生か」という単純な二分論では片付かない。
駆除を任する猟友会も、地域によっては自治体の間で「出動依頼の負担」「報酬の低さ」「危険度の増大」を巡る対立・揉め事も表面化しているようだ。そもそもの高齢化が進み、担い手不足は深刻だ。
政府は「捕獲体制の強化」「電気柵の補助」「出没情報の共有」「AIによる分布予測」などを打ち出してはいるが、現状は追いついていない。結局のところ、国・自治体・猟友会・地域住民が一体で取り組まない限り、問題は解決しない構造になってきた。
西日本、特に九州の方には実感のない話かもしれないが、どうなることやらと思う次第。
最高経営責任者 蜘手 健介
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