(24)人口流動時代と100年時代 生き方と経営(2025.9.22)
以下は長崎でのJackグループ全国大会での私の講演内容の要旨である。
人口減少と人口流動
人口減少はもはや止まらない。
少子化対策の「優等生」とされたフランスでさえ出生率が最低を記録し、日本だけでなく先進国共通の傾向であることは明らかだ。どれほど支援策を講じても効果は一時的で、恒久的な対策にはなり得ない。日本の少子高齢化は「順調」に進んでいくほかないだろう。参政党をはじめ、少子化対策を掲げる政治勢力もあるが、現実的にそれを覆すのは不可能に近い。
しかし、より深刻なのは人口減少そのものよりも「人口流動」である。若者は仕事や機会を求めて移動し、高齢者は地域に残るか、親族や生活環境を求めてやはり大きな町へ越していく。
過疎地から市町へ、市町から地方都市へ、地方都市から中核都市へ、中核都市から東京へ、そして東京から世界都市へ。
相対的に東京は人口が増加する。流出地域では、若者の労働力が失われる。医療の担い手も高齢化し、教育水準も維持できなくなる。結果として地域産業、特に農林漁業やサービス業は衰退の道をたどる。生きるためには衣食住があればいいが、人生には「愉しみ」が必要だ。愉しみがない町に人は集まってこない。
住宅産業はどうなるか。成長を「命題」とするならば、より人口の多い地域で勝負するタイミングが必ずやってくる。我々のような業界も、流入地へ拠点を移さねば成長は望めない。
理念として「特定地域」を掲げる企業は、ある時点で成長にストップがかかるだろう。多角化すればよいという意見もあるが、人口減少の中では大きな利益は生みづらく、利益なきところに再投資はできない。つまり長期的に企業体力は衰弱していく。
中小企業の成長戦略に大きな変化が生まれる。ポイントは「今より大きな市場で勝負できるか」であり「ブランド力」である。
人口減少は怖くない。恐るべきは人口流動の波に遅れることである。
閑話休題
100年時代の生き方と仕事
長生きしたい。これは人間が持つ根幹的な願いである。2025年現在、日本人の平均寿命は男性82歳、女性88歳となった。この50年で男性は約9年、女性は約7年も伸びた計算になる。さらに試算によれば、50年後には男性85歳、女性90歳を超えるとされている。
私が子供の頃には「男の寿命は75歳」と教えられた。当時は一般的な退職年齢が60歳だったため、退職後は15年ほど生きるのが標準的な人生設計とされていた。10年が経ち、15年が経てば寿命を迎えるもの――そんな感覚だったのだ。しかし今は事情が異なる。定年は引き上げられ、70歳まで働く人も珍しくない。もし70歳で仕事を辞めても、90歳までの20年という長い時間が残される可能性がある。
私は100歳まで生きることが単純に幸せだとは思わない。最後は誰にも迷惑をかけずポックリと逝きたいものだと常に考えている。
それはともかく100歳まで生きるとはどういうことか。単に「命がある」ことと「生きる」ことは同じではない。自分の足で立ち、自分の頭で考え判断し、自分で決断できること。生きがい、生活、そして愉しみが伴うことこそが、真の「生きる」であろう。病床に寝たまま長生きすることに意味はない。
私自身は生涯、仕事に携わっていたいと思う。もちろん生活のためでもあるが、仕事を通じて人と関わり、責任を担うことが生きる喜びだからだ。最近は周囲で事業を売却する人が増えている。羨ましいと思うこともあるが、緊張感や後進の成長を見守る時間こそ、自分の生命そのものだと感じることもある。
社会全体も変化している。Youtuberやライバーには一攫千金のチャンスがあり日経平均は過去最高を更新した。
過去を踏襲するような「型」通りの労働収入ではない働き方も一般的になりつつある。AIも進化するだろうし、望む望まないに関わらず世界、社会、周りの環境も大きく変化するだろう。
そんな時代だからこそ「どう生きるか」を今のうちから設計し、常に改善する必要がある。
私たちが携わる住宅産業は、人々の生活に直結する価値ある仕事であり、今さらながら幸せだと思う。
経営者である以上、自分の人生だけでなく社員とお客様の人生、家族にも責任があるのだ、ということを強く再認識しなくてはならないと思う今日この頃である。

最高経営責任者 蜘手 健介
ロビンのリフォーム・リノベーションサービス一覧
ロビンは、換気扇レンジフードの交換リフォームから、設計士がご提案するフルリノベーション、注文住宅まで幅広く対応しております。
それぞれのサービスの紹介、施工事例、お客様の声などをご覧ください。