(19)思い通りにならないことの耐性をつける(2026.8.10)
耐性は、我慢のことではない
前回の続き 全体会議で伝えたことを補足しました。
育成の主語を育てる側から育つ側へ移すという話を書き、「思い通りにならない耐性」という言葉で締めました。
こ の言葉には、放っておくと必ず生まれる誤読があります。
「つまり理不尽に黙って耐えろということですね」という受け取り方です。
実際、耐性という言葉の響きは我慢に近い。しかし私の意図は正反対です。この一点を放置したまま先へ進むわけにはいきませんので、今回はここを書きます。
耐性が何のためにあるのかを説明するには、目的から順に並べる必要があります。
私たちが達成したい理想があります。顧客満足の実現と、社員満足の追求。
強い組織をつくることは、その理想を実現するための手段です。世の中は不安定さの連続ですから、外部環境が揺れても再現性と継続性をもって成果を出し続けられる状態が必要になる。強い組織それ自体が目的ではありません。理想に到達するための手段です。
では、その組織はどうやって強くなるのか。答えは、課題解決のための建設的な議論を重ねることです。誰かが正解を配るのではなく、現場から声が出て、それを突き合わせて次の一手を決める。この繰り返しでしか、組織は強くなりません。
そして、その議論を成立させる前提条件が、思い通りにならないことへの耐性です。
なぜ前提条件なのか。ここが今回の核心です。
思い通りにいかない場面に立ったとき、人がとる反応はだいたい二つに分かれます。ひとつは、感情的に反応すること。相手を責める、言い訳をする、防御に回る。もうひとつは、黙り込むこと。何も言わず、飲み込んで、その場をやり過ごす。
前者では議論が壊れます。後者では議論が始まりません。どちらの場合も、組織は次の一手にたどり着けない。
つまり我慢とは、耐性のことではありません。むしろ耐性の欠如です。黙って飲み込むのは、思い通りにならない現実に向き合えていないから、その場から降りているということです。反発するのも降りるのも、行き先は同じです。
耐性とは、思い通りにならない現実を受け止めたうえで、そこから議論を始められる状態を指します。感情の波を通過させて、なお建設的な言葉を出せる。この力があって初めて、議論は前に進みます。だから耐性は、我慢の別名ではなく、議論のスタートラインなのです。
まとめれば、こういう順番になります。
理想を現実化するため建設的な議論を重ねる。その議論の前提条件として、思い通りにならない耐性を持つ。そして、その議論の場として面談がある。
先日、全員の面談結果に目を通しました。
私にとって耳の痛い意見もありました。現実から逃げずに受け止め、役員と議論を重ねました。
これは自分を良く見せるために書いているのではなく、耐性というものが誰か一方に求められる資質ではないことを示すために書いています。
前回「耐性が足りないのは両者である」と書きました。育つ側だけが試されているのではない。経営する側も、思い通りにならない現実の前に同じように立っています。
これからのフィードバック面談についてお願いがあります。
面談を、評価を伝えられる場だと思わないでください。前編で書いたとおり、「褒める」は育てる側にとっては手段ですが、育つ側から見れば評価されている状態にすぎません。その構図のままでは、面談はいつまでも上司の道具であり続けます。
そうではなく、皆さんの理想を語る場にしてほしい。自分はこの仕事をどうしたいのか、何を実現したいのか。そして、その実現を防げているものは何か。そこを一緒に議論させてください。
理想を語る人がいて、それを受け止めて議論できる相手がいる。その往復が起きている状態を、私は強い組織と呼んでいます。
暑い日が続きます。一人で頑張らず、周囲を見渡して声を掛け合ってください。
最高経営責任者 蜘手 健介
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