(12)台北にて
セイホー社・奥野会長より以前から誘いを受けていた台湾・台北訪問が実現した。2泊の弾丸出張ではあったが、新たな出会いと多くの気づきを得る、実り多い出張となった。奥野会長にはこの場を借りて、改めて感謝申し上げたい。
奥野会長とは20年来の付き合いとなるだろうか。JackグループやLCRにおける共同チラシの企画も、会長の発案と実行力によるものであり、これまでも多大な恩を受けてきた。経営とは常に山あり谷ありの連続であるが、会長もさまざまな経験を経て、この4月より小泉社グループに参画し、代表職を退いた。一つの区切りをつけられた格好である。
(少し気が楽になったのだろうか)と思いきや、実際にお会いすると、会長の顔つきも行動力も、まったく変わっていないことに驚かされた。会社売却という大きな決断についても、オフレコながら多くのことを語ってくださり、同じ経営者として深く考えさせられる内容ばかりであった。形式上は一線を退いた形であるが、今後も業界において必要とされる場面は多いだろう。引き続きご活躍を祈るばかりである。
さて今回の台北訪問は、実に10年以上ぶりであった。前回は、すみれ建築(当時の社名)の高橋社長の案内で
「消費増税により国内建築需要は激減する。だからこそ海外に活路を見出すべきだ」と消費増税後を見据えたタイミングでの視察であったと記憶している。今回はビジネスの話はさておき、現地での体感と印象を記録しておきたい。
現在の台湾は、好景気に包まれている。
牽引の主役は半導体産業である。特にコロナ禍においては半導体の「需要急増」と「供給不足」が同時に起こった。自動車メーカーの減産や納車遅延などを通じて、半導体不足の深刻さが広く知られることとなったのは記憶に新しい。
その中心にあったのが台湾の企業で、課題に直面しつつも、結果として世界的な存在感を高める契機となった。TSMC(台湾積体電路製造)はその象徴であり、2020年から2022年にかけては過去最高益・時価総額を更新した。現在、熊本県菊陽町における工場稼働も始まり、交通渋滞や周辺の分譲地開発、第2工場の計画、大学の研究機関誘致など、日本の地域経済にも大きな影響を与えている。世界中が台湾の半導体製造に依存する構造は、もはや疑いようがない。
一方、今回の滞在で強く感じたのは、台北の物価の高さである。世界的なインフレの影響に加え、日本円と台湾ドルの為替レートが大きく変動しており、10年前と比較して約30%の差がある。結果として、体感的には「すべてが2倍」に感じられた。
なお、2024年の一人あたりGDPは台湾が日本を上回っており(台湾37位、日本38位)、前年比も日本は前年比−4%とマイナス、台湾は+3.4%とプラス成長である。
現地の人からは「昔は日本に憧れていたが、高くて行けなかった。今は日本が安く感じられ、リピーターになっている」との声も聞かれ、経済状況の逆転が実感を伴って伝わってくる。
会食では、ホテルのレストランを訪れたが満席でしばらく待たされた。案内された後、現地の台湾人で店内が賑わっていることに気づく。
「ホテルで食事をすることがステータスとされ、かつては日本人が多かったが、今は台湾人客が中心」との説明があった。
生活実感と経済成長が確実に結びついていることを強く感じた瞬間である。もはや台北は「安くて遊べるアジアの小国」ではない。
しかし、日本からは2〜3時間という近距離であり、台湾の人々はいまも日本に対して親しみと愛情を持ち続けている。台湾料理をはじめ、中華五大料理(北京・上海・湖南・四川・広東)を気軽に楽しめる都市であり、史跡や歴史に触れれば触れるほど魅力が増していく街でもある。同時に、「いつ中国との衝突が起きてもおかしくない」という緊張感も漂っていた。
もちろん、私が見たのは表層的な台北に過ぎないかもしれないが、その奥深さと可能性には強い印象を受けた。
しばらく台湾を訪れていない人も多いかもしれない。今こそ、アジアの巨人へと成長を遂げつつある台北を訪れてほしい。
そして台北から見た日本をどう感じたかをぜひ聞かせてほしいを思う。

最高経営責任者 蜘手 健介
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