(48)情熱の真っ赤な薔薇(2026.3.2)
筆が止まるという表現がある。
文章や絵を描く作業が一時的に中断し進まなくなる状況のことだ。川本君の訃報の後、私もその状態に陥った。何を書こうか、何を感じているかさえ分からなくなった。
毎日、スマホを開きニュースを確認するようになった。「犯人逮捕」の文字を探すが今日もその情報はない。
川本君がこの世を去ったという事実は変わらない。分かってはいるがまだ受け止めきれないし、信じたくない。
犯人は何の目的で、誰だったのか。その真実を知れば少しは気が晴れるかも知れないと思いつつ、犯人が見つからず迷宮入りする可能性も、と頭をよぎる。いつ、このモヤモヤはスッキリするのだろうか。 時間が解決してくれるだろうか。それとも忘却の彼方へ葬り去るしかないのか。
先日、川本君の奥様から連絡があった。
「蜘手さんに認めて褒められたくて、頑張ると言っていました。やはり売上10億円を目指そう」と話をしていたそうだ。それを聞いて昨年、川本君と話をしたことを思い出した。
地方、特に田舎にいると売上5億円あれば「成功者」と見なされる。利益が恒常的に計上されていればなおのこと。周りの目も変わる。地域によって嫉妬心を向けられることもある。
自分も歳を取る。若い時にやりたかった趣味に没頭する時間も増える。若い時は「平凡という行き止まり」とか「破壊と創造」という言葉で自分を鼓舞する毎日だったが、売上と生活が安定し、主力社員と業務ルーティンが一定化するとそれを壊すリスクを無意識で避けるようになる。
この程度で十分じゃないか。田舎だから仕方ないじゃないか、この歳で借金してどうするのと心の声が聞こえる。
「これ以上、頑張る理由」が生まれず、生まれてもどんどんと刈り取られていく。
でも若い社員はチャンスを待っている。気づいていないかも知れないがもっと刺激を求めている。それも感じている。
「川本君、仕事への情熱が冷めたんじゃないの?」
そのような問いかけを川本君へ伝えた。自分では情熱は赤く燃えていると思ってはいても、それを周りは感じていない。つまり「情熱があるフリ」をしているのではないか。
「やっぱり初志であった売上10億円、やろうよ。俺も100億円を目指すから」
10億円という数字に意味はあるか、という問いは無駄である。世の中の数字全てに意味があり、そして意味はない。それを達成すると何があるの?この問いも意味がない。哲学的な問い、それは今ではない。
建築業で売上10億円は1つのラインである。企業として経営者として一人前として見られるライン、そうだと伝えた。
そして10億円やれば認めてやる、それが川本君の「蜘手さんに認めて褒められたい」という言葉に繋がったのだと思う。
しかし思えば「情熱はあるか?」の問いかけは自分自身が感じていたことだった。
売上が安定し、利益も出るようになり、社員は生き生きと仕事をしている。これでいいじゃないか。そう思っている自分に腹が立った。それ以上に私の周りの経営者にもその影響が及んでいると感じた、それが辛かった。
川本君に投げかけた言葉は私自身への言葉だった。つまり川本君は私の鏡だった、そう思うと余計に辛い。
頑張る姿をもうこれ以上、見ることができないなんて本当に辛い。だから私はその分も背負って頑張る、なんて青臭いことも言えないが、それでも、深層に埋没しかけていた情熱を今は確実に感じている。
「情熱の真っ赤な薔薇を胸に咲かせよう」 彼の大好きだったこのフレーズがリフレインしている。
川本君、意志は私たちがしっかりと継ぐからな。
最高経営責任者 蜘手 健介
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